減圧症って何?どうすればよいの?<後半>
ダイビングハック減圧症の予防
前半の記事で、減圧症がどういうものなのか?どんな原因で減圧症になるのか?減圧症になった場合にどういう処置をするのか?というお話をしました。今回は、具体的に減圧症にならないようにするための予防をお話しします。
減圧症の予防・・・ダイビングコンピューターの使用
今ではほとんどのダイバーがダイビングコンピューター(通称ダイコン)を携帯してダイビングをしています。ダイコンは何をしてくれるのか?どうやって使えば良いのかをここで知ってください。わかりやすく具体的にお話しします。
まず、ダイコンは水中で大きく分けると2つの大切な役目を果たしてくれます。
1つ目が、「今水深何mにいて、このままこの場所にいると、あと何分後には減圧症になる可能性が出てきてしまうか」を教えてくれる、というものです。
具体的に言えば、「今水深28.5mです。このままここにいると、あと15分後には減圧症になる可能性がでてきます」という風に画面に表示が出ています。
ダイコンは高性能で、水深が変わればすぐさま再計算がされます。仮にダイバーが水深20mに速やかに移動すると、先ほどの表示が、「今水深20.2mです。
このままここにいるとあと22分で減圧症になる可能性が出てきます」などと水深と残り時間の値が変わります。
ここで知ってほしいのは、次の2つの事です。
まず、こまめにダイコンを見るようにしましょう、ということ。もう一つが、残り時間が1桁などになる前に、少しずつ浅い方に移動しましょう、ということです。水中で移動ができなくなるような出来事が突然起きるかもしれません。常に10分程度の余力を残しておくことをお勧めします。
次にダイコンは、もし仮に残り時間が0、つまり、このまま浮上すると減圧症になる可能性があります、という状態になってしまった際の対処法(減圧停止と言います)の水深と時間を表示してくれます。
減減圧停止って何?
減圧停止とは、このまま水面に浮上してしまうと、減圧症になってしまう可能性があるダイバーが、水中であらかじめ窒素を排出し、減圧症になる可能性を無くしてから水面に上がるために行う行為の事です。イメージしやすいようにお話しすると、水深0mに上がると減圧症になるかもしれませんが、水深3mならまだ大丈夫ですよ、水深3mは呼吸をするたびに入ってくる窒素の量よりも、呼吸をするたびに出ていく窒素の量の方が多いですよ。この水深3mで○○分呼吸をしてください。○○分後には、減圧症になる可能性がなくなって、安全に水面に浮上することができますよ、ということです。少し突っ込んでお話しすると、ダイコンに表示される減圧停止の水深は、3,6,9mと3m刻みです。
また、水深3mと言われても、完璧に水深3mにいるのは至難の業です。水深3mと言われたら、一般的に、水深2.6mから水深3.4mのことを指します。具体的に言うと、ダイコンが水深3mで減圧停止を行いなさい、と表示してきたら、その水深にいきます。すると、減圧停止の必要な時間が表示されます。例えば10分、などと表示されます。
あとは、その10分のカウントダウンが終わるまで、水深3mにとどまり呼吸を続けます。
カウントダウンが終わると、ダイコンはいつもの表示画面に戻ります。そして、ダイバーは、減圧症になる可能性がなくなって、安全に水面に浮上することができます。
安全停止って何?減圧停止とどう違うの?
ここで、「安全停止ってあるよね。あれと減圧停止がごっちゃなんだけど」というダイバーも多いのではないでしょうか?
このお話をしておきます。安全停止も水中で窒素を排出するための行為なことは同じです。
ただ減圧停止と違うのは、「このまま浮上しても減圧症になる可能性がほぼないダイバーが行うのが安全停止、このまま浮上をすると減圧症になる可能性が高いダイバーが行っているのが減圧停止」ということです。安全停止は、一般的に水深5mで3分止まりましょう、です。
具体的には、水深2.6mから水深5.9mの間で3分間止まりましょう、です。
減圧停止に比べて、水深の範囲の指定も緩やかです。御幣を避けながらわかりやすく言うと、念のため窒素を排出しておきましょう、というのが安全停止、絶対に必要だから窒素を排出しましょう、というのが減圧停止です。
このことがわかれば、「今まで、安全停止中なのに、ガイドに言われて安全停止を途中で切り上げて浮上することになって心配だったことがある」というダイバーの不安は解消されるのではないでしょうか?
減圧停止するダイビングはレジャーダイビングではありません
ここまで話を聞くと、「なんだ、窒素がたまりすぎても、減圧停止をすればいいんだ」と思う方がいらっしゃるかもしれません。そうではありません。減圧停止はあくまで非常手段です。
通常のダイビングで行うものではありません。レジャーダイビングとは、減圧停止をする必要がない(ダイコンのあと○○分の表示が0分にならないようにして水面に帰ってくる)ダイビングです。ダイコンの中に入っている計算式はあくまで一般的な呼吸のスピードのダイバーのものです。
呼吸が荒いダイバーはダイコンが計算している量より多い窒素を吸収していてもおかしくはありません。また、減圧症になりやすい体質の方もいます。一般的には肥満体系の方はそうでない方に比べて減圧症になりやすい、なんて言われます。これはかなり専門的な話になるので割愛しますが、脂肪に蓄積された窒素は通常よりも排出されるスピードが遅いと言われています。
肥満体系の方は脂肪が多く、窒素をため込んだら排出しにくいのです。
ダイコンが表示する、残り○○分、3mで○○分止まりなさい、はあくまで、計算上の数値だということを知っておいてください。
具体的な目安も知りたい
ダイコンの表示を守ってダイビングをすることの重要性はわかったけれど、どのくらいの水深で、そのくらいの時間潜ったら減圧症になる可能性が出てくるのか、いまいちイメージがつかないから、、、という方もいらっしゃると思います。
そこで、私の使っているダイコン(アクアラングのカルムプラスというダイコンです)の計算式を目安としてお話しします。ダイコンにはプランモードというものがあり、あらかじめ、水深何メートルに行けば、何分間が減圧停止を必要とせずに潜っていられる時間かを教えてくれます。
水深9m→99分、水深12m→99分、水深15m→65分、水深18m→46分。
この辺りまでは、結構潜っていられるんだな、と思うのではないでしょうか。水深18mと言ったって、ずっと初めから水深18mにはいけません。だんだん深くなって水深18mにいき、帰りはもっと浅いところに来るわけです。
トータル1時間以上潜っていられるでしょう。しかし、怖いのは、ここから下の水深です。
水深21m→34分、水深24m→24分、水深27m→19分、水深30m→16分、水深33m→13分、水深36m→11分、水深39m→9分。こんな話を聞いたことがないですか?「この前、水深40mぎりぎりのところに○○がいるって聞いて、写真をみんなで撮りに行ったんだよ!なかなか見つからなくて、やっと見つけて・・・」すごく怖いことをしているんです。
窒素が体の中にたくさん蓄積されている、なんて言っても、それらは目で見ることは出来ません。何もなかったなら良いですが、もしも減圧症になっていたら、と思うと、とんでもなく恐ろしいのです。
十分な余裕をもってダイビングをしてください
皆さんに知ってほしいのは、十分な余裕をもってダイビングを楽しもう、ということです。残り時間が短いときに大発見をして、急いで撮影を始めるのではなく、安全に、一度水面に上がり、休憩時間をとって、もう一度その場所にチャレンジしてください。
ダイビングではもしもの時のために残圧は50残してエキジットしよう、と言います。窒素に関しても同じです。
もしもの時を考えて、あと○○分が一桁にならないように少しずつ浅いところに移動しながら潜ることを強くお勧めします。
おしまいに、言葉の勉強
途中で説明するべきか考えながらお話をしていたのですが、わかりやすく内容を伝えたかったため、専門用語をあまり使わずにお話を続けました。おしまいになりますが、言葉の勉強を少し付け加えます。まず、あと○○分、と言っていたもののことを、「NDL」(NO DECO LIMIT)と言います。日本語では「無減圧潜水時間」と言います。「減圧停止をする必要がなく潜っていられる時間」ととらえてもらうと良いです。次に、減圧停止のことを英語では「DECO STOP」と言います。「DE」が「排出」の意味です。「CO」がコンプレッションの頭文字で、「圧」です。
次に、安全停止のことを英語では「SAFTY STOP」と言います。その名の通りですね。また、ここからはスラングですが、減圧停止が必要になること、3mに行きなさい、とダイコンから表示が出ることを多くのダイバーは「DECOった」(でこった)とか「DECOが出た」(でこがでた)と言います。デコらないようにダイビングしてね、なんて言われれば、減圧停止の必要が内容にダイビングしてね、という意味です。これらは実際のダイビングシーンでよく耳にするはずです。また、ここからはジェスチャーですが、減圧停止が必要になった場合に、それを周りのダイバーに伝えるために、多くのダイバーは、おでこをポンポンとたたくジェスチャーをします。
デコとおでこをかけているのだと思います。これもほとんどのダイバーに伝わる一般的なジェスチャーとして一緒に覚えておいて損はありません。ダイビングをしたことない方からしたら、「昨日さダイコン見たらデコ出ててびっくりしてさ」なんて話を聞いたら、大根におでこ?なんだそりゃ笑、となりますね。