ドライスーツが水没しない本当の理由
ダイビングハック1年を通じて使える、体が濡れないドライスーツ。ドライスーツはダイビングの器材の中でも最大の大発明といえるかもしれません。ドライスーツがあることによって、水温が低い時期でもダイビングが可能になったばかりか、WETスーツに比べて、はるかに疲労感の少ないダイビングが可能になりました。今回は、そんなドライスーツがどうして水没しないのか?という本当の理由をお話いたします。
水没って何?どういうこと?
まず、「水没」というものの説明から入ります。水没、とは、本来なら、体を一切濡らすことなくダイビングができるはずのドライスーツに水が入り込んでしまい、体が濡れてしまうことを言います。せっかくドライスーツを使用したのに、体が練れてしまってはダイビングも台無しです。
多くのダイバーはこんな風に思っていますが・・・実は
多くの方は「体にぴったり合っているサイズのドライスーツを使用すれば水没しない」と思い、水没してしまったダイバーの多くは、「水没してしまったのは、レンタルの、自分のサイズに合わないドライスーツを使ったからだ」なんて思います。
確かに、ドライスーツは手首と首の部分がシールになっていて、その部分が自分の手首や首と比べてあまりにゆるゆるであれば、水没をしてしまいます。
しかし、実際は、そこまでサイズがぴったりな必要はないのです。むしろ、「結構、ゆるゆるなんだけど、全然水没せずにダイビングができた」なんてことも起こりますし、その逆に、「ぴったりというか、むしろ手首も首も苦しいくらいだったのに、まさか水没するなんて」ということも実際のシーンでは起こるのです。
よく水没してしまうダイバーとそうでないダイバーの違い
ドライスーツが水没しない本当の理由を話すために、よく水没してしまうダイバーと、水没せずに潜ることができるダイバーの大きな違いを言います。まず、水没してしまうダイバーの多くは、ウェイト量の調整があまり上手ではないことが多いです。特に傾向として、本来必要なウェイト量よりも、軽めのウェイト量を選択することが多いです。一方、水没させずに潜ることができるダイバーは、ウェイト量の調整が上手です。特に傾向としては、適正なウェイト量かやや重めのウェイト量を選択することが多いです。
ウェイトの問題がどう関係するの?
この話をするためには、ドライスーツでのダイビングの仕方をお話ししないといけません。ダイビングでは水中での浮力の調整がとても重要です。息を吐けば(肺がしぼねば)体が沈む、息を吸えば(肺が膨らめば)体が浮く、普通に呼吸していれば、ふわふわと浮きもせず沈みのせず、同じ高さに留まることができる、これを中性浮力がとれている、などと言います。
そもそも、ダイビングスーツは結構な浮力を持っています。ダイバーが水深を下げていくと、水圧が高くなっていきます。それと同時に、ダイバーが着用しているスーツも圧縮されて、スーツの持つ浮力が失われていきます。そんな時に、スーツが失ってしまった浮力を補うために、ダイバーはBCDジャケットという器材を着用しているのです。BCDジャケットはブラダーという空気袋がついている為、必要に応じてジャケット内に空気を入れることができます。Wetスーツでダイビングしている際は、浮力を確保したい場合には、このBCDジャケットを使う以外に方法はありません。DRYスーツは違うんです。DRYスーツは、スーツの中に空気を入れることができます。DRYスーツでダイビングをしている際には、BCDジャケットに空気を入れて浮力を確保する方法と、DRYスーツ内に空気を入れて浮力を確保する方法が可能です。
水没しないダイバーの多くは、DRYスーツに必要に応じて空気を入れることの意味を理解していたり、それが上手に行えるダイバーです。DRYスーツの中に空気を入れれば入れるほど、スーツ内に入れた空気は、外に向かって出ていこうとします。これが外部からの水の侵入(水没)を防止するんです。
一方、良く水没してしまうダイバーの多くは、このことがまだ理解できていないか、わかっていても上手に行うことができません。水深が深くなっていき、水圧が増し、スーツも、スーツの中にあらかじめ入っていた空気も圧縮された際に、スーツ内に十分な空気を送り込みません。すると、するすると、外部の水はスーツ内に引き込まれていくんです。つまり水没します。
ウェイト量が軽すぎるダイバーの多くは、「空気をスーツ内に送り込みたいけれど、これ以上送り込んでしまうと浮いてしまう!」となります。だから水没します。その結果、首も手首もぴったりというか、むしろきつかったのに水没してしまった、という現象がおきます。一方、適正、又はやや重めにウェイトをつけているダイバーは、常にスーツの中に必要に応じで空気を蓄えておくことができます。だから水没しないんです。その結果、結構サイズ的に首も手首も緩かったけれど水没しませんでした。となります。
実はこのことこそが、ドライスーツが水没しない本当の理由です。ドライスーツを使用したことがある方なら、首のシールや手首のシールを見て、「こんなに簡単な作りで、どうして水没しないんだろう?」と思ったことが一度はあるはずです。ドライスーツが水没しない本当の理由は、サイズうんぬんよりも、その使い方なんです。もし、ドライスーツで毎回水没してしまって困っている、というダイバーがいたら、
①試しに1,2キロ普段よりも重めのウェイトをつけてみる。
②水中で息を吐いたら沈むかどうか
をこまめにチェックしながら、普段よりも多めにドライスーツに空気を入れてみよう、と意識してダイビングをしてみる、ということをお勧めします。快適なドライスーツでのダイビングをぜひ、楽しんでください。